Fri. 不明  スリ

  軍人の父に負い目をおぼえたる少年はスリになろうとおもう

道端から子苗を引き抜いてそこら辺のプランターに入れて忘れていた。するとこれだった。おかげで貴重な桜草が虐げられた。いい色があたりを明るくしてくれる。
色川武大がテレビで語っている。件の歌は彼の生い立ち。「何かしなければならない、スリになろうとして3か月ほど電車のなかで観察をしていると、財布のありかはわかってきた、がどうしても手が出ない。才能がないと思った」。いい話だ。大ぜいの息子たちよ。仕事はいくらでもあるもんだな。そしてなんらかの才能はだれにでも隠れているらしい。
孤独なのは自分だけだ、と思うのはちょっと違う。みんな寂しい。もてなかったYは独身主義をひけらかした。でもたった一人だけ近づいてきた時は逃さなかった。これがYの才能だった。30年以上たったいまでもこの人を失うまいと必死。失えば後に訪れる孤独を思うとぞっとする。巡り合いは神秘だと実感している。平凡に見えて周囲のみんなもそんな歴史を背負っている。つづけ息子たちよ。年代にもよるが、幸運の確率は不運の確率よりだんぜん低い。めったにないから幸せはわすれない。

大学病院で眼科の継続検査、特別変化はない。次回からは個人医院に紹介される。医療現場で何か変化が起こっている。