Fri. 演奏会

清塚信也

 

 

 

NHKの番組から。

戦後の小学生時代、楽器がある家などなかった。音楽室に1台ピアノがあって、さわるな、と張り紙してあった。その分音楽はあこがれの時間だが、合唱部に選抜されて、地区のコンクールのために、夏休み中登校させられた思い出は複雑である。

就職して、初めてのボーナスで演奏用のエレクトーンを買い、ヤマハに通った。忘年会で披露して、存在を示した。

そんな母の楽器を、娘はちっちゃいころからいたずらして、大学は音楽科に進んだ。コンクールで優勝して、パリに留学することになった。結局そこに居ついて2人の子供を育てている。

田舎の少女の萌芽が、こんな風に膨らんだのを目の当たりに見るのは、不思議な気持ちがする。